かまわぬ手帖 vol.26 |細川染めを知る

かまわぬ手帖 vol.26 |細川染めを知る

細川染めとは

 

2つの型紙を使って染める「細川(ほそかわ)染め」はご存知でしょうか。
注染の〈 糊置き → 染め → 水洗・糊落とし → 乾燥 〉の工程を2回以上繰り返して、ひとつの柄を作り上げる技法です。

一度染めた柄の上に、別の型紙で「糊置き/染め」の工程を行うため、熟練の技が必要とされます。

明智光秀の三女で、細川忠興のもとに嫁いだ「細川ガラシャ」が細川染めの語源になっています。古くなった着物に別の型紙で染め付け、新たな模様に再生させたという逸話から、2型以上の型紙を用い多色染めすることを「細川染め」と呼んでいます。

#しゃぼん玉

 


柄の重なりや、隣接する別色を染めることが出来るのが「細川染め」の特徴です。自由気ままなネコの姿が人気の手ぬぐい<猫三昧>で、細川染めの出来るまでをご紹介いたします。

型紙 1型目|背景になる色を染める

  1. くり抜かれた猫の部分に「防染糊」で糊置きする
  2. 糊の付いていない部分に黄色の染料を注いで染める
  3. 水洗いをして糊を落とす
  4. 乾燥
  5. 生地巻き

1型目 猫の部分に糊付け ⇒ 糊の付いていない背景を黄色で染める

 

型紙 2型目|猫の輪郭を染める

  1. 1型目で染めた模様に、2つ目の型の輪郭が合うように重ねて糊置き
  2. 糊の付いていない部分に染料を注いで染める
  3. 水洗いをして糊を落とす
  4. 乾燥
  5. 生地巻き
  6. カット
  7. たたんで完成!

1度目の染めで水洗い・乾燥を行うことにより晒生地は伸縮しゆがみが起こります。2型目の糊置きは生地のゆがみを整えながら行うため、作業は職人の技術が頼りです。

仕上がった手ぬぐいには微妙なズレが生じますが、ふたつと同じものはない手作業ならではの味わいとなります。


2型目 先に染めた黄色の柄に猫の輪郭線を合わせながら糊置き⇒ 猫の輪郭と魚のホネを染める

猫三昧の出来上がり!

 

続いては、カラフルな色の重なりが楽しい「くだもの」と「しゃぼん玉」も図説でご紹介します。


くだもの

  1. 1型目は主に赤系の模様を染め「ぶどう」の1色目を染める
  2. 2型目は黄色・緑系でくだものとミカンのヘタ・さくらんぼの軸など細かい部分と、ぶどうの2色目を染める
  3. 完成です!
ぶどうは濃淡の2色で重ね染めすることにより立体感が生まれています。

 

しゃぼん玉

  1. 1型目は淡いピンク・水色・黄色を「ぼかし染め」の技法で外側の輪郭は濃く、内側に行くにしたがって薄く染める
  2. 2型目は、1型目よりもわずかに濃い色の染料で水色・青をぼかし染めする
  3. 完成です!
淡い色づかいと柄の重なりによって、しゃぼん玉の透明感を表現しています。

 

イラストでご覧いただくとキレイに柄がはまっていますが、これを晒に1枚1枚糊付けしながら染めていくのは至難の業です。

額装した手ぬぐいは「木場」。古来からある商業文化の風景を描いた趣きのある柄ですが、こちらは「三遍細川(さんべんほそかわ)」といって、3枚の型紙を使用しています。


一連の作業を3回繰り返すため、2型の場合以上に生地の伸縮やゆがみが起こり柄のズレが生じますが、ひとつとして同じものが出来ないといった良さがあります。

このような柄を合わせていく染めを「はまり細川」とも呼びますが、今となってはこの技法ができる職人さんは大変少なくなっています。

 

今回は2型染めについてご紹介しました。
手ぬぐいは多様な技法を使い分け、33cm×90cmの同じ大きさの中でさまざまなデザインを表現しています。

手ぬぐいがどのように染められているのか想像してみるのも楽しいですね。ぜひお手持ちの手ぬぐいでお試しください。

次回更新は、2024年6月5日(水)予定です。