かまわぬ手帖 vol.28 |てぬぐい生地ができるまで【後編】

かまわぬ手帖 vol.28 |てぬぐい生地ができるまで【後編】

今回は「工場探訪記」ということで前編と後編に分けてお送りしているコラムの後編となります。今回のコラムでは「てぬぐい生地ができるまで」というテーマの下、生地を織る工程をご紹介しています。前編では、織物の基礎や、たて糸とよこ糸を織機にセッティングする工程をご紹介しました。

後編ではいよいよ、実際に生地を織る工程をご紹介して参ります。どのように織られているのか一緒に工場を覗いてみましょう!


  • 製織:生地を織機で織る

全ての準備が整ったところでいよいよ、生地を織る工程に入ります。ここに来るまで大変な手間暇がかかっていることが分かります。先ほどのボビンをシャトル織機にセットして、シャトルが往復しながら緯糸を挿入し、経糸と緯糸が交差して織物が形成されていきます。シャトル織機の特徴である「みみ」がこの段階で作られ、織物の端がほつれないように仕上がります。

この工場では約200台のシャトル織機が稼働しているそう!

高速でシャトルが往復しているのがわかります

シャトル織機特有の「バッタンバッタン」という大きな音が工場内に響き渡ります

織りあがった生地は、下の「木綿棒」に巻かれていきます

 

  • 低速で織られることでうまれる生地のあそび

旧式のシャトル織機が生地を織る速度はシャトルレス織機の10分の1程度とゆっくりしたペースで生地が織り上げられていきます。こちらの工場では1日に約4反(40m)の生地が織り上がります。単純計算でも1時間に4m。ゆっくり織り上げていることがわかります。

低速で織ることで糸への負荷が少なくなり、糸本来の柔らかさが保持されるからです。また、シャトルを通す際に「たて糸」が大きく上下に開くことで、たて糸とよこ糸に畝(うね)と呼ばれるわずかな段差が生まれ、布地表面に「あそび」ができます。この「あそび」こそが、生地にボリュームと柔らかな手触りをもたらします。

  • メンテナンスしながら大切に使い続けられている機械

織機メンテナンス用の工具たちがずらっと並ぶ
  • 検反:織りあがった生地のチェック
  • 織り上がった生地は、検品を経て、汚れや穴があるもの、大きな糸節といった不良品を取り除きます。

    複数の道具を使い分け、気になる箇所を修正

    こうして、長い道のりを経て出来あった小巾生地は、晒加工所や染色工場などに納品されていきます。

    • まとめ

    シャトル織機で手間暇かけて織られた小巾生地は、独特の表情と風合いを持っています。洋服が主流となった現代では、広巾生地が主に流通しており、てぬぐいや浴衣に使用される小巾生地の需要は減少傾向にあります。そのため、国内でシャトル織機を使用して小巾生地を織れる工場も年々減少しており、人手不足も課題となっています。 昔ながらの製法を守り続けることで、「暮らしの道具」として使えるてぬぐいの生地が生み出されています。手ぬぐいを手に取られる際には、その背景にある歴史と職人の技を感じていただければ幸いです。