かまわぬの小風呂敷シリーズ『おいしい風呂敷』が今年、デビュー10年!たくさんの方にご愛用いただいているこの風呂敷もまた、特別な染色法で作られています。
「手捺染(てなっせん)」という技法で染色している、風呂敷の生地を作る工場見学の様子をレポート。“おいしくてかわいい” 風呂敷が出来るまでを紐解いてまいりましょう。
手捺染とは・・・
「手捺染」とは伝統工芸品にもよく用いられる技法で、手作業で丁寧に染め上げることから、このような名前が付けられています。始まりは古く、江戸時代(西暦1700年頃)に広まった「友禅染め」が元になっています。
明治時代に入ると型紙と化学染料を用いた「型友禅」が発展。さらに型紙が「シルクスクリーン型」へと移り変わり、現在の染めの方法が確立されました。
手捺染で使われる道具たち
【型(かた)】
デザインを「色ごと」に分けて、スクリーン型を作成。昔は絹糸をメッシュとして使用していたので「シルク」という名前が付いていますが、現在はポリエステル・ナイロン・ステンレスなどがメッシュの素材として使われています。
背景を染める型紙
【マス見本】
出来上がった型を使い、調合した色で試し刷りをします。製品同様の染色・洗い・蒸し・乾燥の工程を経て、色の確認を行います。
染料の調合はレシピが決まっていますが、気候やわずかな配合の違いでも色は変わってしまうため、調整には職人の経験や知識が活かされています。
染色工程を覗いてみよう!
ここからは<染め>についてお話します。工場には25mの捺染台が4台並んでおり、100mを1ロットとして染め作業を行います。注染とは異なり、生地を全て広げ1型ずつ柄付けをしていきます。
【生地張り】
25mの捺染台が4台並んでおり、100mを1ロットとして染め作業を行います。
染め台には粘着性があり、生地にシワが出来ないよう丁寧に張っていきます。
【染め】
シルクスクリーン型を使い、職人がスキージ(大きなヘラ)で1パネル分ずつ染料を付けます。1台25m×台数分を一度に染めていく、大変集中力のいる作業です。
注染とは異なり捺染は1色につき1枚の型紙が必要です。その為、1色ずつ〈染め→乾燥→染め〉を繰り返していきます。作業中の「たまねぎ」は淡い色を先に染め、次に背景になる青色を重ねていきます。柄をぴったりと同じ位置に重ねるのは至難の業です。
【乾燥】
染め上がった生地を捺染台からはがし、天井に吊るして乾燥させます。
【蒸し】
生地を高温の蒸気の中に通す蒸し加工を行います。
蒸すことによって、染料を生地に定着させ、発色も良くなります。
【洗い】
水洗いで余分な染料を落とし、ソーピング(洗剤)で生地を洗い、より発色を高めていきます。
【仕上げ】
乾燥後、整理加工で真っすぐに整えたり風合いを良くする加工を施します。
染めに不良がないか検反して、生地の完成です。染め上がった生地を裁断・縫製して、ようやく『おいしい風呂敷』の出来上がり!注染とは異なる技法ですが、こちらも大変な手間をかけて作られています。
かまわぬの風呂敷の染め方は「友禅浸透染め」とも呼ばれるもので、染料が生地に浸透し“裏表”の差が目立ちません。通常よりも時間を要する染め方には、熟練した職人の技が光ります。
工場見学、お楽しみいただけましたでしょうか?
おいしい風呂敷も10年目を迎え、長きにわたりご愛顧いただき誠にありがとうございます。これからも皆さまのお弁当時間をより楽しく、彩り豊かになるようなモノづくりを目指してまいります。
次回、更新予定は6月5日(月)です。