現在販売中の2025年夏コレクションのてぬぐい。その制作背景を知るべく、かまわぬのデザイナーチームにお話を伺いました。今回のコラムでは、制作の裏側を皆様にご紹介したいと思います。
Q.今夏のテーマは何ですか?
A.今年の夏のテーマは「暮らしに溶け込む涼感」です。昨今の日本の夏といえば、長く続くうだるような暑さ。外に出ればジリジリと照りつける太陽、歩いているだけでサウナにいるような酷暑です。そんな厳しい季節の中で、ひんやりとした気分になれるようなデザインがあったらいいなと感じました。夏は“てぬぐいシーズン”本番。屋内外で毎日使っても飽きのこない、自然と暮らしに溶け込むデザインを目指しました。
Q. てぬぐいで「夏」をどのように表現したのでしょうか?
A.今年のデザインでは、スイカや花火、ひまわりといった夏を象徴するエネルギッシュなモチーフに加え、日本の夏ならではの情緒が感じられる景色を映し取りました。華やかさだけでなく、夏の持つ多層的な魅力をてぬぐいを通して表現しています。例えば、「蛍景色」や「露草ちらし」では、儚く美しい瞬間を捉え、静けさから生まれる涼やかさを表現しました。一方で、日本では昔から夏の着物に雪文様など視覚的に涼を感じる柄を取り入れてきたように、「アイスキャンデー」や「流氷」といったモチーフにも、見た目から涼やかさを感じられる工夫を凝らしています。そんな先人の知恵にもヒントを得ながら、てぬぐいを通してさまざまな「涼」を楽しめるようデザインしました。 画像は”流氷”の指示書。3色の青で涼やかさを表現。
Q.デザインの中で特にこだわったポイントや工夫した点はどこですか?
A. 今回のデザインでは、注染の特性である、1つの型紙で一度に多くの色を染める技法を最大限に活かし、それぞれのデザインに最適な技法を使い分けることで、繊細ながらも深みのある色合いを再現しました。
例えば、「蛍景色」では、静かな夜に瞬く蛍の光を“筒ぼかし”の技法で表現しました。型紙を使わず、筒状の道具を用いてフワッと光る蛍の幽玄的な輝きを再現。特に、淡く光るぼかし染めの加減や染料の相性など、高度な技術が求められるため、職人と何度も調整を重ね、絶妙な色の広がり方を目指しました。
また、「おどり猫」や「アイスキャンデー」では、さっぱりとした白地を生かして夏らしさを表現しています。猫たちが楽し気に踊る様子を描いた「おどり猫」では、シンプルな色合いながらも、浴衣の柄に豆絞りやトンボ、雪輪文様をはじめ、28種類の意匠を取り入れ、盆踊りの賑やかな雰囲気を表現しました。さらに、ソーダやミント、レモン味をイメージしたカラフルな配色が印象的な「アイスキャンデー」では、白地の生地が氷菓ならではの透き通るような涼感を引き立てています。私たちのてぬぐいを通して、厳しい夏の暑さを軽やかに乗り切る一助になれたら嬉しいです。
今回は、2025年夏コレクションのてぬぐいが生まれるまでのお話をお届けしました。 是非、この夏を彩る一枚を見つけてみてくださいね。
次回更新は6月5日(木)を予定しています。