かまわぬ手帖vol.35|てぬぐいの色、いろいろ

かまわぬ手帖vol.35|てぬぐいの色、いろいろ

かまわぬ手帖 vol.34 |てぬぐいができるまで 読む かまわぬ手帖vol.35|てぬぐいの色、いろいろ 1 分

かまわぬでは、年間500柄以上の手ぬぐいを染めています。店頭に並ぶ手ぬぐいの他、カスタムオーダー品まで、その種類はさまざま。なかでも「色」は仕上がりの印象を大きく左右し、同じデザインでもまったく異なる表情を生み出します。今回は、手ぬぐいを彩る「色」の奥深さについて、ひも解いていきたいと思います。

手ぬぐいの「色」ってどうやって決まるの?

手ぬぐいのデザインが生まれるとき、まずはパソコンや手描きで下絵を作成します。それから、絵柄の世界観に合う色を決め、色見本帳から最適な色を探していきます。
注染(ちゅうせん)には、長年職人の間で受け継がれてきた色のレシピがあります。染める前に、実際の晒(さらし)生地に染めた色見本とデザイン画を照らし合わせ、イメージ通りの色を選びます。迷ったときは、ファッションや印刷物、デジタルといった幅広い領域で使われている共通の色見本帳を参考にすることもあります。

かまわぬの手ぬぐい、どんな色が多い?

手ぬぐいには、赤や青、黄色など、いろいろな色が使われますが、実際にかまわぬで現在販売している手ぬぐいは、どの色が多いのでしょうか!実際に調べてみました。

かまわぬのてぬぐい色別の統計はこちら

結果は「青色」がダントツ!手ぬぐいといえば定番の「豆しぼり」の柄や「麻の葉」柄といった古典柄に使われるのはもちろん、春は華やかな暖色系、夏は水色や藍色といった清涼感を感じさせる青系、秋は落ち葉やコーヒーといった落ち着いたブラウン系、冬はクリスマスやお正月といったお祝い感を演出してくれる赤系などシーズンによって使用する色の割合も変わってきます。

色の指定と再現方法

手ぬぐいを染める際に欠かせないのが「仕様書」です。仕様書には、色見本帳と同じ「色チップ」を貼り付け、場合によってはデザイナーが希望する色のイメージをメモで加えることもあります。たとえば、いちご柄の手ぬぐいを染める際、同じ赤色でも、苺のように鮮やかな赤色を求めるのか、りんごのように落ち着きのある赤色を求めるのかで、仕上がりのイメージが大きく異なります。そのため、「苺のような鮮やかな赤色を目指してください」といったリクエストを仕様書に記入します。この仕様書を染工所に渡すことで、職人がそのイメージに合わせて染料を調合し、色を再現して染めていきます。

画像左から:ラディッシュ / 額装八重桜 / 猫もよう 草色

ラディッシュはフレッシュさを表現するため、4色使用して染めています。

額装 八重桜には、ベースとなる生成りの色をはじめ、全部で5色を使って染め上げています。

猫もよう 草色はベース生地が濃い生成で染められているため、後から染める「草色」は色チップの色より少し濃くなります。

一般的に注染で使われる染料には、主に以下の3種類があります。

  • ナフトール染料:比較的鮮やかな濃色を再現できます。
  • 反応染料:色が鮮やかで、幅広い色相を再現することができます。
  • 硫化染料:黒や紺などの濃色系の染色に優れています。

色の系統によって染料を使い分けることが一般的ですが、ぼかし染めや差し分けの技法では、異なる染料を同時に使用すると色がうまく混ざらなかったり、逆に滲んでしまったりすることがあります。見た目の色だけでは判断できない難しさがあるため、技術と経験が重要です。

色ブレはなぜ起きるの?

手ぬぐいの染料は、完成品が決まっているわけではなく、その都度イメージに合わせて調合されます。さらに、気温や湿度の影響で微妙な色の違いが生じることも。まったく同じ色を再現するのは難しいですが、それが手仕事ならではの味わいを楽しむ要素のひとつにもなっています。

同じグレーのページでも濃いグレーから淡いグレーまで様々。

染色業界を取り巻く環境

近年、浴衣を着る機会が減ったことによる需要減少や、職人の後継者不足により、手ぬぐいと同じ染め方をする染工所の数も少なくなっています。さらに、染料の廃番も増え、使える色の選択肢が狭まっているのが現状です。しかし、江戸や明治の時代には、限られた色数の中で工夫を凝らしたデザインが生み出されていました。かまわぬでも、色の組み合わせに創意工夫を重ね、これからも魅力的な手ぬぐいを作り続けていきます。


今回は「手ぬぐいの色」にフォーカスしました。手作業ならではの微妙な色の違いも、注染の手ぬぐいならではの味わいとして楽しんでいただけたら嬉しいです。

次回の更新は3月5日(水)です。どうぞお楽しみに。